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【ペットの病気】2016.12.09

卵巣甲状腺腫が疑われた犬の1例

Suspected struma ovarii in a dog

 

第36回動物臨床医学会年次大会プロシーディング,No.2,247-248(2015)

 

要約 

 13歳の雑種犬が食欲不振で来院した。腹部超音波検査で中腹部に直径4.3㎝の嚢胞状腫瘤が認められた。第9病日に切除目的で開腹したところ、腫瘤は腫大した左卵巣だった。病理組織検査を行ったところ甲状腺濾胞上皮細胞に類似した形態を示す腫瘍細胞が確認され、甲状腺の濾胞構造を模倣していた。これは犬や猫ではほとんど報告がないが、人の卵巣甲状腺腫に当たると推察された。本症例の術後の経過は良好であった。

 

はじめに

巣甲状腺腫は主に成熟した甲状腺組織からなる単胚葉性または高度限定型の奇形腫である[1]。犬や猫ではほとんど報告がなく、人でも極めて稀な卵巣腫瘍で、卵巣奇形腫のおよそ5%を占める[2-4]。

 今回犬の卵巣甲状腺腫と疑われる症例に遭遇したのでその概要を報告する。

 

症例

雑種犬、雌(避妊済)、13歳、体重21.6kg。数日前からの食欲不振を主訴に来院した。

初診時一般身体検査所見:腹部触診にて中腹部に3~4㎝の腫瘤を触知した。他の一般状態は良好であった。

初診時画像検査所見:腹部超音波検査では中腹部の腹膜に接する直径4.3㎝の嚢胞状腫瘤がみられた。また腫瘤表面に血流が観察された。胸部X線検査では異常はみられなかった。

初診時血液検査所見:Albの軽度上昇(4.3g/dl)、ALP(390U/l)とALT(91U/l)の上昇が認められた。

 治療および経過1第9病日に腹腔内腫瘤の摘出手術を実施した。腫瘤は左卵巣が嚢胞状に腫大したもので、周辺の脂肪組織を巻き込み腹膜に癒着していた。子宮は全体的に萎縮し、右卵巣は存在しなかった。左卵巣腫瘤と子宮の全摘出を行い閉腹した。術後数日で食欲は改善した。

 病理組織検査所見:左卵巣部に形成された腫瘤は、概ね卵巣様の結合組織性の被膜によって被われていた。腫瘤内は被膜より繊細な結合組織により大小多数の小葉に分画されており、一部では出血が認められた。腫瘤内では小型上皮細胞が索状~腺管状に配列しつつび漫性に増殖していた。形成された腺管は内腔に好酸性を呈するコロイドを貯留し、甲状腺濾胞を模倣していた(図1)。また腫瘍組織が被膜内に浸潤する像が認められた。腫瘍細胞は小型類円形を呈しており、好酸性~やや淡明な少量の細胞質と比較的均一な形態を示す類円形核を有していた。腫瘍細胞が索状や充実状に配列しているように観察される部位でも、腫瘍細胞はしばしば好酸性のコロイドを入れた濾胞構造を形成していた。腫瘤辺縁部の被膜では、静脈内に腫瘍細胞塊が浸潤する像が認められた。

 腫瘤の一部の腫瘍組織に接する部位において、腫瘍細胞とはやや異なる形態を示す細胞によって構成された細胞塊が認められ、やや大型の類円形細胞が索状に配列していた。これらの細胞は中程度~やや豊富な細胞質を有し、細胞質内は好酸性顆粒状を呈することが特徴的であった。精巣の間細胞に類似した細胞形態を示し、卵巣では性索間質細胞(門細胞)に相当する可能性が考えられた。

 また右卵巣に相当する部位に卵巣組織は確認されず、子宮全体にも著変は認められなかった。

 以上の所見より左卵巣腫瘤は卵巣甲状腺腫と推察された。

 治療および経過2第34病日に病理組織検査の結果を考慮しT4(0.4μg/dl)、fT4(<0.3ng/dl)、TSH(0.20ng/ml)を測定した。また頸部甲状腺の腫脹も認められなかった。本症例では術後特筆すべき治療は行っていないが、1年6ヶ月以上経過した現在でも良好な一般状態を維持している。

 

考察

 犬や猫ではほとんど報告がないが、人では卵巣内に甲状腺腫瘍が発生することが知られている。卵巣甲状腺腫と分類されるには全体の組織のうち50%以上を甲状腺組織が占めなければならないとされていて、本症例でも腫瘤内は概ね甲状腺様の組織で満たされていた。また犬では稀に異所性甲状腺が舌や頸部腹側、前縦隔、心基底部などに生じ腫瘍化することが知られている。本症例の腫瘍も卵巣周辺に存在した異所性甲状腺組織から発生した可能性も完全には否定できない。しかし腫瘤周辺は卵巣様の結合組織で覆われ、腫瘤の一部に卵巣の構成成分と思われる組織がわずかに観察されたことから、卵巣内に発生していた可能性が示唆された。これらの事から左卵巣の腫瘤は卵巣甲状腺腫と推察された。

 人の卵巣甲状腺腫の患者において甲状腺機能亢進症の臨床症状または血液検査でそのような数値が出ることは稀で、5~8%未満で起こる。本症例では第34病日にT、fT、TSHの測定を行ったがいずれも甲状腺機能亢進症を示す数値ではなく、また甲状腺機能亢進症の臨床症状もみられなかった。

 この雑種犬は1歳頃に避妊手術が施されている。卵巣のみの摘出だったと思われるが、左卵巣部分に卵巣甲状腺腫が形成されたこと関係しているかは分からない。

 本症例では局所浸潤と静脈浸潤が確認されているが、腫瘍の再発や転移はなく1年6ヶ月以上経過した現在でも良好な一般状態を維持している。

 犬の卵巣甲状腺腫はほとんど報告がなく、今後症例の蓄積が必要である。

 

参考文献

1)Dunzendorfer T, deLas Morenas A, Kalir T, Levin RM. Struma ovarii and hyperthyroidism. Thyroid 1999; 9:499.

2)Kondi-Pafiti A, Mavrigiannaki P, Grigoriadis Ch, et al. Monodermal teratomas (struma ovarii). Clinicopathological characteristics of 11 cases and literature review. Eur J Gynaecol Oncol 2011; 32:657.

3)Yassa L, Sadow P, Marqusee E. Malignant struma ovarii. Nat Clin Pract Endocrinol Metab 2008; 4:469.

4)Yoo SC, Chang KH, Lyu MO, et al. Clinical characteristics of struma ovarii. J Gynecol Oncol 2008; 19:135.

 

卵巣甲状腺腫が疑われた犬の1例-1

図1

形成された腺管はコロイドを貯留し甲状腺の濾胞構造を模倣している。

 

注意

この症例報告は第36回動物臨床医学会年次大会で発表したものを加筆したものです。

本稿をお読みの際は必ず第36回動物臨床医学会年次大会プロシーディングNO.2,247-248(2015)を参照して下さい。

【ペットの病気】2014.11.17

猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症の一例

A case of feline gastrointestinal eosinophilic sclerosing fibroplasia

 

第35回動物臨床医学会年次大会プロシーディング,No.2,391-392(2014)

 

要約 

 1か月前から慢性の嘔吐があるとの主訴で来院した5歳齢の猫の開腹手術を行ったところ、胃幽門部に直径3cmの腫瘤が存在した。また近くの大網のリンパ節も腫大していた。胃腫瘤の全摘出は行わず、全層材料と腫大したリンパ節を採取し病理組織学的検査を行った結果、猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症(Feline gastrointestinal eosinophilic sclerosing fibroplasia)と診断された。その臨床経過と治療経過を報告する。

 

はじめに

 猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症:Feline gastrointestinal eosinophilic sclerosing fibroplasia (FGESF)は最近Craigらによって提唱された名称である[1]。病変は主に消化管と周辺のリンパ節に限局し、結節性、非腫瘍性で高密度に線維増殖が見られ好酸球と肥満細胞が浸潤する。多くは中心部が壊死し潰瘍化した壁内腫瘤であり、組織学的にはFGESF病変は多数の大型線維芽細胞によって索状に配列した高密度で硬化した膠原線維が分岐している特徴を示す[1]。FGESFの病変部は好酸球と肥満細胞が主体で、少数の好中球やリンパ球、形質細胞を含む混合炎症性細胞の集団を形成する[1]。

 FGESFの病変は腫瘍病変と似ている。これらの病変部での非常に硬い索状の膠原線維層は類骨にも類似していて骨肉腫と誤診されるかもしれない[1,2]。また多数の肥満細胞の存在は硬化した肥満細胞腫と診断されてしまうかもしれない[1]。

 FGESFの56%(14/25)で細胞内細菌が見つかり[1]、また別の研究ではメチシリン耐性ブドウ球菌が最も多く検出されたとの報告もある[3]。本症の病因は知られていないが、これらの細菌感染や消化管内の移動性の異物による損傷、遺伝的な好酸球の失調、ヘルペスウイルスの感染や食品性過敏症などが示唆されている[1,4]。

 これまでの所FGESFの発生報告は少なく、今回その臨床経過と治療経過を報告する。

 

症例

雑種猫、雄(未去勢)、5歳、体重4.9kg。1か月前から慢性の嘔吐があるとの事で来院してきた。

各種検査所見:腹部触診にて上腹部に3~4㎝の球状の腫瘤を触知した。他の一般状態は良好であった。腹部超音波検査では胃に幅1.5㎝の高エコー・低エコー性が入り混じり、漿膜面が不規則な腫瘤が認められた。また直径6㎜に腫大したリンパ節も見られた。血液生化学検査ではRBCとPCVの軽度上昇、Platの軽度低下、好酸球数の上昇(2668/μℓ,WBC:11600/μℓ)が見られた。またTP値の低下(5.1g/dℓ)とGlu値の上昇(202mg/dℓ)が見られた。FeLV抗原・FIV抗体検査は共に陰性であった。

 治療および経過1:第4病日に開腹手術を実施した。術前に行った胸部・腹部X線検査では異常は見られなかった。胃幽門部に直径3cmの硬い結節状の腫瘤が見られた。腫瘤を中心に胃壁は固く肥厚しており漿膜面は充血していた。また腫瘤近くの大網のリンパ節もやや腫大していた。他の消化管及び臓器に異常は認められなかった。幽門部腫瘤の全摘出は行わず全層材料と腫大したリンパ節を採取し閉腹した。なお腫瘤にメスで切り込む際、軟骨を切る様な感触があった。

 病理組織検査所見:胃粘膜面では潰瘍が認められ、胃粘膜固有の構造は消失していた。潰瘍下から粘膜下組織深部、筋層表層でも本来の構造は消失し、び漫性に細胞増殖や膠原線維の増生が認められた。潰瘍直下の胃粘膜面では、比較的成熟した膠原線維が索状に配列しつつ豊富に増生し、線維索間には線維芽細胞が豊富に増生していた。索状に配列する膠原繊維はしばしば均質な好酸性を呈し、硝子化していた。線維索間では腫大した核を有する線維芽細胞の増生に混じって、多数の好酸球やマクロファージが浸潤していた(図1)。胃中層部は表層部に比較して線維芽細胞の増生が顕著に観察された。膠原線維索は繊細で、好酸球の浸潤も軽度であった。胃の深層部では、表層のような成熟した膠原線維が索構造を形成する像は認められず、線維芽細胞および繊細な膠原線維が混在しつつ豊富に増生し炎症細胞浸潤は乏しかった。リンパ節は皮質を中心にリンパ濾胞が腫大し、腫大した濾胞では胚中心の拡大を伴っていた。リンパ節辺縁部では好酸球が多数浸潤していた。一部のリンパ洞では線維芽細胞と膠原線維の軽度造成が認められた(図2)。本例の胃やリンパ節では明らかな細菌感染は確認されなかった。またいずれの組織にも異型細胞の増殖像は認められなかった。以上により本症例をFGESFと診断した。

 治療および経過2:第11病日よりメチルプレドニゾロン酢酸エステル(8㎎/head IM 2週間毎)とセフォベシンナトリウム(コンべニア®,8㎎/kg,SC,2週間毎)の投与を開始した。また体重減少が推測されるため[1]、高栄養療法食(a/d; Hill’s)の給餌を指示した。

 第33病日、食欲もあり嘔吐も認められなかった。上腹部に直径3㎝の結節性の腫瘤が触知でき、初診時と変化はなかった。腹部超音波検査でも腫瘤に著変は認められなかった。血液生化学検査ではRBC(12.24×106/μℓ)、Hb(19.0g/dℓ)、PCV(61.9%)の上昇が見られた。また好酸球数は387/μℓ(WBC:4300/μℓ)だった。その他の項目に異常は認められなかった。

 第74病日、食欲もあり嘔吐も見られず、便秘が認められたもののQOLは維持していた。腹部触診にて腫瘤の形状に変化は認められず、一般状態は良好で体重の減少もなかった。腹部X線検査では胃付近に不透過性の亢進した領域が認められ、結腸に糞塊が多く見られた。

 第93病日、一般状態に変化は認められなかった。腹部超音波検査では腫瘤に著変は見られなかった。血液生化学検査ではRBC(14.13×106/μℓ)、Hb(21.6g/dℓ)、PCV(68.4%)の上昇とWBC(3200/μℓ)の減少が見られた。好酸球数は320/μℓだった。またAlb(4.2g/dℓ)の軽度上昇も認められた。

 本稿執筆時(240病日)、食欲もあり嘔吐も見られず胃幽門部の腫瘤に変化は認められていない。

 

考察

 本症例は1か月前から慢性の嘔吐が主訴で来院した5歳齢の未去勢雄猫で、末梢血中の好酸球の増加が見られた。開腹した所、胃幽門部に3㎝の硬い結節性の腫瘤が形成され、付近のリンパ節もやや腫大していた。病理組織学的検査において胃の腫瘤は猫消化管好酸球性硬化性線維増殖と呼ばれる病変に相当し、リンパ節で認められたリンパ節炎も胃の病変に関連している可能性が示唆された。本症例の胃やリンパ節では明らかな細菌感染は確認されなかったが、Craig らの報告では猫25 例のうち14例で細菌群が微小膿瘍や壊死の中心部に確認され、FGESFの原因が細菌感染による可能性が高いことが示されている[1]。

 胃幽門部に形成された腫瘤は完全切除が不可能と判断し全層材料の採取を行った。Craig らの報告では猫25 例のうち8例が胃に腫瘤が認められ、そこよりも遠位に病変部があった場合よりも外科的に切除する事は困難でしばしば摘出不可能と判断された[1]。

 抗生剤の投与と腫瘤の摘出手術、または手術単独の猫の生存期間は、手術とPrednisoneの投与を行った猫に比べ優位に短かったとの報告から[1]、2週間毎にメチルプレドニゾロン酢酸エステル(8㎎/head IM)を投与した。Craig らは抗生剤の治療には反応しないと結論付けているがセフォベシンナトリウムも併用した[1]。他にモサプリドクエン酸塩の内服なども勧めたが飼い主は投薬不可能との事だった。

 本症例は末梢血中の好酸球の増加が見られた(2668/μℓ,WBC:11600/μℓ)。Craig らは血液検査を実施した12症例の内7症例で好酸球の増加が認められたと報告している[1]。術後メチルプレドニゾロン酢酸エステルの投与を開始し、第33病日と93病日に血液検査を行ったところ、それぞれ387/μℓ(WBC:4300/μℓ)と320/μℓ(WBC:3200/μℓ)と好酸球数は正常値を維持していた。

 本稿執筆時(240病日)において胃幽門部の腫瘤に変化はなく、また消化管の他の部位や腹腔内臓器においても異常は認められていない。FGESFはしばしば消化管の異なる場所に再発したり、リンパ節以外の周辺の臓器(例えば肝臓や膵臓)でも同様の病変を形成したりする事が報告されている[1,5]。また嘔吐や食欲不振、体重減少も認められず比較的良好なQOLを維持している。

今回腫瘤の摘出には至らなかったが良好な経過が得られた。これは早期にメチルプレドニゾロン酢酸エステルなどの投与を開始できたからかも知れない。

 猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症の発生報告は少なく、本症の病態や治療方法について今後さらなる検討が必要である。

参考文献

1)Craig LE, Hardam EE, Hertzke DM, Flatland B,Rohrbach BW, Moore RR : Feline gastrointestinal eosinophilic sclerosing fibroplasia, Vet Pathol, 46,63-70 (2009)

2)Stimson EL, Cook WT, Smith MM, Forrester SD,Moon ML, Saunders GK: Extraskeletal osteosarcoma in the duodenum of a cat. J Am Anim Hosp Assoc 36:332-336(2000)

3)Ozaki K, Yamagami T, Nomura K, Haritani M, Tsutsumi Y, Narama I : Abscess-forming inflammatory granulation tissue with Gram-positive cocci and prominent eosinophil infiltration in cats : possible infection of methicillin-resistant Staphylococcus, Vet Pathol, 40, 283-287 (2003)

4) Kazushi AZUMA, Takehito MORITA, Kei KOIZUMI, Kazuyuki HUKATSU, Akinori SHIMADA: Feline Gastrointestinal Eosinophilic Sclerosing Fibroplasiaの1例, 日獣会誌,65,879-882(2012)

5)Andrea Weissman,Dominique Penninck,Cynthia Webster,Silke Hecht,John Keating,Linden E Craig: Ultrasonographic and clinicopathological features of feline gastrointestinal eosinophilic sclerosing fibroplasia in four cats, Journal of Feline Medicine and Surgery,15 148-154(2012)

 

 

猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症-1図1

【胃表層部】 索状に配列する膠原繊維はしばしば均質な好酸性を呈し、硝子化していた。線維索間では腫大した核を有する線維芽細胞の増生に混じって、多数の好酸球やマクロファージが浸潤していた(矢印)。

 

 

 

 

 

猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症-2図2

【リンパ節】好酸球の浸潤やリンパ濾胞の腫大が観察され、加えて被膜や小柱と連続しつつ、線維芽細胞や比較的成熟した膠原線維の増生が認められた(↔)

 

 

 

 

 

 

注意

この症例報告は第35回動物臨床医学会年次大会で発表したものを加筆したものです。

本稿をお読みの際は必ず第35回動物臨床医学会年次大会プロシーディングNO.2,391-392(2014)を参照して下さい。

【ペットの病気】2013.03.02

犬 扁平上皮癌1.jpg ワンちゃんの皮膚にできる悪性の腫瘍に「扁平上皮癌」と呼ばれるものがあります。

 「扁平上皮」とは、皮膚や口内の粘膜、肛門の粘膜などを構成する組織で、ここがガン化すると「扁平上皮癌」となります。皮膚以外にも、口腔内にも時々見られる事があります。

 悪性度の高い腫瘍なので、多臓器に転移する可能性もあります。

 

 

 

犬 扁平上皮癌2.jpgこの写真のは、左肘関節に野球ボール大の扁平上皮癌が見られた、高齢のラブラドール・レトリバーの症例です。

 腫瘍の表面は出血と化膿が見られ、衰弱も激しく、削痩し全身状態もかなり悪かったです。

 

 通常の扁平上皮癌は手術による摘出が第一選択となりますが、これほど全身状態が悪ければ、手術不適となります。また飼い主様が抗癌剤の治療を望まなかったため、サプリメントなどで様子を見る事になりました。

 

 

犬 扁平上皮癌3.jpg 

 

 

 

 

 

 

 

 同一の症例のFNA像です。

 

 扁平上皮癌は、細胞がシート状に配列し、青白い小さな顆粒が細胞質内に見られる事があります。

【ペットの病気】2013.01.21

 「肥満細胞腫」はワンちゃんの皮膚にできる悪性の腫瘍です。

 

肥満細胞腫1.jpg 乳腺腫瘍を除いた皮膚の悪性腫瘍で、最も日常的に見られるのがこの肥満細胞腫です。また、ネコちゃんにも見られる事があります。

 

 またこの肥満細胞はFNA(穿刺吸引細胞診)をする事で、簡単に顕微鏡検査で診断出来ます。

 左の写真の様に、細胞質内に青~赤紫色の顆粒を含んだ細胞像が、この肥満細胞腫の特徴です。

 

 因みに「肥満」と付いていますが、動物が太っている事とは関係なく、この細胞が大型である事から「肥満細胞(mast cell)」という名前が付きました。

 

 

肥満細胞腫2.jpg 肥満細胞腫はその外観からはなかなか診断出来ません。一般には皮下織に境界明瞭な数mm~数㎝のしこりを形成します。皮膚のどこにでも出来る可能性がありますが、四肢や体幹部に出来る事が多いと言われています。

 

 また肥満細胞は炎症性の細胞なので、腫瘍周辺に痒みや発赤が出たり、嘔吐があったりする事もありますが、そのような症状が出ない事もあります。

 

 そして肥満細胞腫は多臓器に転移する可能性もあります。

 

 

 

 

肥満細胞腫3.jpg 肥満細胞腫と診断された場合、他への転移がなければ、手術による摘出が第一選択となります。

 手術は、腫瘍周辺を3㎝以上マージンを取って摘出しなければならないので、例え3~4㎝のしこりであっても、大きく皮膚を切開する必要があります。

 また腫瘍が指先など、十分なマージンを取っての摘出が困難な場所であった場合、断脚(足全体の切除)する事もあります。

 

 また抗癌剤の投与や、放射線照射などをする事もあります。

【ペットの病気】2013.01.16

 ネコちゃんはワンちゃんと違って、呼吸が荒くなる事はほとんどありません。

 興奮して激しく動いた後などは、呼吸が速くなる事はありますが、通常では胸の動きを注意してみていないと呼吸を確認出来ないでしょう。

 

 ネコちゃんの呼吸が速かったり、荒かったり、苦しそうにしていたりした場合それは病気のサインかもしれません。特に開口呼吸や腹式呼吸など、ネコちゃんの呼吸がおかしい時は、すぐに動物病院に相談しましょう。

 

乳び胸1.jpg

 

 猫で上記の様な症状が出た場合、胸水が貯留している事があります。

 「胸水」とは胸腔(胸部の肺や心臓など臓器以外の空間)内に水が溜まっている状態の事です。

 その水が膿の場合は「膿胸」、血液の場合は「血胸」、乳び(リンパ液の一種)の場合は「乳び胸」と言います。今回はその乳び胸について説明します。

 

 胸腔内には胸管と呼ばれる、脂肪を多く含んだリンパ液(乳び)が流れる管があります。

 この胸管からそのリンパ液(乳び)が漏れ出す事が猫で時々あります。原因は外傷であったり、先天的なものもありますが、多くは原因不明の突発的なものです。

 

 乳びが胸管から漏れ出すと、左のレントゲン写真の様に、胸部全体が白くなります。こうなると肺が十分に拡張する事が出来なくなり、息をするのが苦しくなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

乳び胸2.jpg 針を刺し、採取した「乳び」です。

 苺ミルクの様な液体です。

 

 遠心分離すると乳白色の液体になります。この事からも貯留していた液体は脂肪に富んだ「乳び」である事が分かります。

 

 

 

 

乳び胸3.jpg

  沈渣を鏡顕すると、Mφや中皮細胞も見られますが、リンパ球主体の像が見られます。

 「乳び」は脂肪を多く含んだリンパ液と言うのが、ここからも確認出来ます。

 

 この乳び胸は治療する事が難しい病気です。

 開胸し胸管の損傷部分を確認し、縫合する手術もありますが、かなり難しい手術です。

 多くは針を刺して地道に抜くか、抜去用の管を設置し抜くしか方法がありません。

【ペットの病気】2013.01.15

マラセチア2.jpg ワンちゃんの皮膚には「マラセチア」と言う、真菌(カビ)の一種が少数ですが常在しています(左写真の矢印)。

 それが、夏の暑い時期や、シーズーなど皮膚に脂の多い子では、数が増加し皮膚炎や外耳炎を起こします。

 

 

 

 

 

 

 

 

マラセチア1.jpg マラセチアによる痒みや炎症は、耳道内や皮膚全体に見られます。皮膚では特に、腋や股や下腹部に発赤や脱毛、鱗屑(フケ)が見られる事が多いです。

 

 またシーズーなど、皮膚に油分が多い犬種によく見られ、なかなか治らない事が多い病気です。

【ペットの病気】2013.01.13

ハエ・ウジ症1.jpg 夏期の暑い日が続くと、皮膚にウジがわく事があります。ワンちゃん・ネコちゃんどちらにも可能性はありますが、特に歳をとって衰弱している外飼いのワンちゃんに多いと思います。

 

 左の写真は背側腰部の広範囲にウジが寄生した、高齢雑種犬の症例です(剃毛しています)。飼い主様は毛によってウジの寄生に気付きませんでした。

 ウジは皮膚にトンネルを作り寄生するので、皮膚の炎症と化膿が見られます。

 

 

ハエ・ウジ症2.jpg このワンちゃんは、皮膚にしこりがあり元々化膿していたため、ハエがたかりウジが寄生したのだと思われます。

 この様に、腫瘍や外傷が化膿してウジがわく事が多いと思います。

 

 治療はウジの物理的な摘出と、抗生剤の投与です。また衰弱している場合が多いので、輸液などをします。

 また飼い主様に、屋内で飼われる様に指導し、再びハエが卵を産み付けない様な環境にする事が大切です。

【ペットの病気】2013.01.12

炎症性乳癌.jpg 犬の乳癌ではまれに、腫瘍とその周辺組織に激しい炎症を起こすものがあります。

 この炎症性乳癌は犬の全乳腺腫瘍の内、約8%を占めると言われています。

 

 炎症性乳癌は他の腫瘍と違い非常に厄介です。それは周辺組織に激しい炎症を起こすため、手術が出来ないからです。

 外観から炎症性乳癌を疑えればよいのですが、通常の腫瘍として摘出手術をした後で、炎症性乳癌と判明した場合、激しい炎症のため癒合不全を起こし、悲惨な最期となってしまいます。

 

 

炎症性乳癌2.jpg

 

 左の写真は炎症性乳癌のポインターです。乳腺部の腫瘍の化膿と周辺組織の炎症・発赤・疼痛が見られました。

 発赤は後肢大腿部にまで及んでいます。

 また、後肢全体の浮腫も起こしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

炎症性乳癌3.jpg

【ペットの病気】2013.01.11

犬乳腺腫瘍1.jpg 犬の乳腺腫瘍は中高齢(7歳ごろ~)のワンちゃんでよく見られます。

 若いころ(2回目の発情出血まで)に避妊手術をしていない女の子に発生しやすいと言われています。

 乳腺腫瘍の大きさはさまざまで、皮膚の中に米粒を埋め込んだように小さいものから、手拳大のものまであります。

 

 犬の乳腺腫瘍は、良性のものもあれば「乳癌」の様に悪性のものもありますが、悪性である可能性は50%と言われています。小さな腫瘍であれば様子を見てもいいのですが、大きさが1㎝を超えるものはやはり摘出した方が良いでしょう。

 

犬乳腺腫瘍2.jpg

 

 犬の乳房は通常左右5対ずつあるのですが、小さな腫瘍が1個であれば部分切除しますが、腫瘍が複数あったり、大きなものであれば片方の乳腺を全て摘出する事もあります。その場合、胸~腹部にかけて大きく切除する事になります。

 

 

 

 

 

 悪性の乳腺腫瘍はその腫瘍細胞が、リンパ管を通り様々な臓器(特に肺)に転移する事があります。

 早期に発見し、摘出手術をする事が大切です。

 もし胸~腹部の皮下にしこりを見つけたのなら、一度動物病院に相談してみて下さい。

【ペットの病気】2013.01.10

アカラス症2.jpg 毛包虫症(アカラス症)は、毛包虫(ニキビダニ)によって起こる犬の皮膚病の事です。

 毛包虫は毛穴に寄生するダニの仲間です。実は多くのワンちゃんの毛穴には常在していると言われていますが、通常だと皮膚病になる事はありません。

 それが、あるきっかけ(免疫の異常や、他の皮膚病など)で皮膚に脱毛、発赤などを呈します。通常「毛包虫症」単独では痒みは出ないと言われています。

 

 余談ですがこの毛包虫は、種特異性が非常に強く、犬には犬の毛包虫が、牛には牛の毛包虫が、人間には人間の毛包虫がそれぞれ存在しています。

 

 

 

 

アカラス症1.jpg それぞれの動物に固有の「毛包虫」があり、他の動物種へは感染しません。

 そしてほとんどの毛包虫は無害なのですが、ワンちゃんにのみこの様な皮膚病が発症するそうです。

 

 治療は駆虫薬を使います。しかしこの毛包虫症はなかなか治療するのが難しい皮膚病です。通常のワンちゃんに常在しているが故に、駆虫するのが難しいのだと思います。

 また毛包虫は他のワンちゃんに感染しません。

 

 

※写真は眼瞼部に毛包虫症の脱毛を呈しているL・レトリーバー

【ペットの病気】2013.01.08

腸重積2.jpg 「腸重積」は左の写真の様に、腸管の中に腸管が入り込んでしまう事で起きます。

 

 ワンちゃん・ネコちゃんのどちらでも起きる可能性がありますが、若齢であったり、ウイルス性などの腸炎を患っている時に併発して起きる事が多い傾向にあります。

 因みに左の写真は、4ヶ月齢の子猫の症例です。

 

 

 

 

 

腸重積1.jpg 腸重積の特徴は、腹部触診で重積した部分が、「ソーセージ状」に硬結し、またエコー検査にて「ドーナツ状」の陰影が確認される事です。

 この様な特徴的な症状なため、学生の教科書でもよく取り上げられますが、実際の臨床の現場では滅多に見られない様に思います。

 

 

 

 

 

腸重積3.jpg

 

 腸重積を起こした場合、腸閉塞の状態になります。

 手術にて重積部分の整復をしなければなりません。すんなり元に戻れば良いのですが、腸同士が癒着している場合があります(左写真の鉗子の先が、癒着し穿孔した部分。また組織も壊死している)。

 そうなると、腸管を切除する必要があったり、腹膜炎を起こしてより重篤になってしまったりします。

【ペットの病気】2013.01.07

 異物による腸閉塞の中で厄介なものに、「ひも状異物」と言うものがあります。

 

 ミシン糸など細くて長いひも状のものを飲み込んだ場合、そのまままとまって便に交じって排泄されれば問題ないのですが、糸の端が腸管に引っかかり、腸がアコーディオン状に手繰り寄せられてしまう事があります。

 この様になってしまうと、単純な腸閉塞ではなく、腸管が裂けて腹膜炎を起こしてしまう事があります。

 

ひも状異物1.jpg

 

 左のレントゲン写真は、慢性の嘔吐があるとの事で来院した、5歳のT・プードルです。

 バリウム投与24時間後のレントゲン写真です。24時間経ったにも関わらず、胃内の食渣の滞留と、アコーディオン状の小腸が造影されています。タオル的なものを飲み込んだ場合、タオル生地はバリウム液を吸収して、いつまでも造影が残ります。

 

 

 

 

 

 

ひも状異物2.jpg 

 同じ症例の手術中の写真です。

 小腸が糸によってアコーディオン状に手繰り寄せられているのが分かります。胃内にもタオルがあり、同時に取り出しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

ひも状異物3.jpg 結局詰まっていたのは細く裂けたタオルでした。タオルは細くひも状に裂けるので、この様な症例が起きる事があります。

 

 タオルをかんで裂いてしまうワンちゃん・ネコちゃんを飼われている飼い主様は、この様な事故が起こらないよう注意しておく必要があります。

【ペットの病気】2013.01.06

 ワンちゃん・ネコちゃんも様々な異物を食べてしまう事で、腸閉塞を起こす事があります。

 腸閉塞の主な症状としては

・慢性の嘔吐         ・下痢

・食欲不振

などがあります。

 

腸閉塞 靴ひも.jpg

 上の写真は、靴ひもを食べてしまったネコの症例です。

 慢性の嘔吐があるとの事で来院して来ました。バリウム造影した所、胃内の食物の滞留と、十二指腸部分に人工物の様なものがある事が分かりました(矢印)。

 内視鏡で見た所、靴ひもでした。この症例は手術する事なく、内視鏡で取り除く事が出来ました。

 

腸閉塞 首輪.jpg

 

 左の写真は、慢性の嘔吐があるとの事で来院した犬の症例です。

 腹部の触診で、中腹部に硬く細長い構造物が触れました。

 エコー検査では、小腸内に強いシャドーを引く異物が確認されました。写真の様に強いシャドーを引くという事は、食べ物以外の何か硬いものを意味します。

 腹部レントゲン検査では中腹部に、金属片の様な異物が写っていました。

 

 手術にて取り出した所、首輪が2本出て来ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腸閉塞 靴下.jpg

 

 左の写真は、慢性の軟便があるとの事で来院した若齢の犬の症例です。

 子犬でよくある下痢と最初思っていましたが、腹部触診にて中腹部に硬い構造物が触れました。

 エコー検査にて、こちらも強いシャドーを引く異物が確認されました。そして腸管の前後に液体の貯留も見られました。

 

 この症例は一晩入院させて様子を見た所、翌日便と一緒に靴下が出て来ました。

 

 異物場合、完全閉塞でなければ消化管内を移動して、便と一緒に排出される事もあります。手術適応かどうかの判断が大切になって来ます。

 

 またこの様な異物を食べてしまう事故を、飼い主様が普段から気を付けて管理し、防がなければなりません。ワンちゃん・ネコちゃんの生活環境をよく観察して、この様な事故がない様に勤めて下さい。

【ペットの病気】2013.01.04

麦粒腫1.jpg 「麦粒腫」は眼瞼(マブタのふち)にある皮脂腺で、マイボーム腺と呼ばれる分泌腺の化膿や炎症によって、腫脹する病気です。

 麦粒腫の外観はイボ状であったり、全体が境界不明瞭に腫脹したりと、様々です。

 

 

 

 

 

 

麦粒腫2.jpg 左の写真は同一の犬の麦粒腫の症例です。下眼瞼にφ1㎜程のイボ状の小さな腫瘤が出来ています。さらにその腫瘤の開口部のマイボーム腺が化膿によって腫脹しています。

 麦粒腫が出来やすいワンちゃんは、マブタをピンセットで絞ると、マイボーム腺から蓄積している白い皮脂が出て来る事があります。

 

 

 

 

 

麦粒腫3.jpg 麦粒腫の治療は針やメスなどで、化膿しているマイボーム腺を切開し、排膿します。また同時に上の写真の様に、他のマイボーム腺もピンセットで溜まっている皮脂を排出させます。

 

 ただし、一度手術で治療しても再発する事の多い病気です。

【ペットの病気】2013.01.03

マイボーム腺腫1.jpg 「マイボーム腺腫」は眼瞼(マブタのふち)に出来る良性の腫瘍で、脂腺である「マイボーム腺」にできます。

 この腫瘍はイボ状の外観で、ワンちゃんのマブタに時々見られます。

 

 ワンちゃんのマブタに出来るイボで、もう一つよく見られるものに「麦粒腫」と言うものがありますが、こちらはマイボーム腺など眼瞼の皮脂腺の化膿によって出来ます。

 ※「麦粒腫」については別の項をご覧下さい。

 

 マイボーム腺腫は良性の腫瘍ですが、眼球に接触すると慢性の結膜炎などを起こします。

 

マイボーム腺腫2.jpg また極端に大きくなると、手術による摘出が困難になる事があります。イボが小さい内に手術によって切除する事が望ましいです。

 

 左の写真は犬のマイボーム腺腫の切除を行った、同一の症例の写真です。

 マイボーム腺腫は腫瘍の根元から取る必要があるので、マブタの皮膚ごと切除します(クサビ状に)。そして縫合糸をクロス状にして、1~2糸で縫合します。

 大きなイボですと、縫合するのが大変だったり、術後目の大きさが変わってしまったりします。

 

 マブタのイボを発見した場合早めに動物病院を受診しましょう。

【ペットの病気】2013.01.02

歯槽膿漏1.jpg

 歯槽膿漏は歯石などの蓄積によって、歯根や歯肉周辺が膿んだり、充血したりする病気です。

 人間では、歯槽膿漏=歯周病として軽い歯茎の充血もそれに含んでいますが、我々獣医師が「歯槽膿漏」と言うと、かなり重度のもをイメージします。

 

 左の写真は、重度の歯石の蓄積と歯槽膿漏を起こした犬(ヨークシャー・テリア)の症例です。歯石はワンちゃん、ネコちゃん共に溜まりますが、これ程重度になるのはどちらかと言うとワンちゃんに多いと思います。

 

 

 

 

歯槽膿漏2.jpg

 

 左の写真は上と同一の症例ですが、これ程重度になると、歯根部が化膿して骨や周辺組織を溶かし、瘻管を形成して眼の下に排膿する事があります(矢印)。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歯槽膿漏3.jpg

 またこの様な場合、歯石の除去や抜歯が必要になるのですが、動物の場合全身麻酔をかけて処置する事になります。

 当然、高齢になるほど麻酔に対する危険性が出てきます。

 

 歯は普段からのケアが大切になります。歯磨きや、ガムなどで歯石の予防をし、動物病院で定期的なチェックをしましょう。

 それでも歯石が出来る子は、全身麻酔をかけて歯石の除去をした方が良いでしょう。

【ペットの病気】2012.12.31

東洋眼虫.jpg 「東洋眼虫」はメマトイ(ハエの一種)が動物の涙液を吸う時に、眼に感染する寄生虫で、成虫は体調5㎜程の細い糸状です。

  犬・猫どちらでも見られますが(もちろん人間にも寄生します)、特に野山で生活している子でよく見られます。逆に都心部ではほとんど見られません。

 私がかつて勤務していた動物病院は田舎にあったので、年に何件かは見る機会がありました。

 

症状は、慢性的な結膜炎と目ヤニです。

 

 この東洋眼虫はマブタの裏や、結膜や瞬膜の間に潜んでいます。大量に寄生していれば虫体の発見は簡単なのですが、1~2匹しかいない場合は見落としてしまう可能性もあります。

 しかも1~2匹程度であれば、軽度の結膜炎や目ヤニしか出ないので、軽い目薬を処方して終りにしてしまう場合もあります。

 

 野山で生活しているワンちゃん・ネコちゃん、または山へよく出かける子で、慢性的な結膜炎を起こしていれば、一度は「東洋眼虫」を疑ってみても良いかも知れません。

 

 因みにこの東洋眼虫は、ピンセットで一匹一匹、ピンセットを使って目から虫を摘出して治療します。

 また野山などの環境に依存して発生するので、住む環境が変わらなければ何度も感染します。

【ペットの病気】2012.12.30

疥癬2.jpg 疥癬(ヒゼンダニ)は皮膚の深部にトンネルを作り生息する、体調0.1~0.2mmと顕微鏡でしか見られない非常に小さなダニです。

 

 症状は皮膚の激しい痒み、脱毛、細かい鱗屑(フケ)、点状~粟粒状の痂皮(カサブタ)や出血です。

 全身の皮膚に見られますが、特に顔面や首周りや前足によく見られます。

 

 

 

 

 

 

 

疥癬1.jpg

 ワンちゃん、ネコちゃんのどちらにもよく見られますが、特に外飼いやノラのネコちゃんによく見られます。

 また野生のタヌキから猟犬に感染する事もあります。

 

 人間にもヒトヒゼンダニがありますが、犬や猫のヒゼンダニは人には感染しません。ダニが一時的に人間の皮膚に付き、発赤が見られる事はありますが、人の皮膚には寄生できないので症状は軽く、一時的なものです。

 

 症状が重度なものはなかなか治らない事もありますが、皮膚に付けるスポットタイプの薬で疥癬の駆除と予防が出来ます。

【ペットの病気】2012.12.30

耳ダニ.jpg

 

 耳ダニ(ミミヒゼンダニ)はワンちゃんやネコちゃんの耳道に寄生する、体長0.1~0.2mmと顕微鏡でないと見られない非常に小さなダニです。

 

 症状は耳の強烈な痒みと炎症、そして黒~チョコレート色のややポロポロとした耳垢が大量に排出されます。

 

 外飼いやノラのネコちゃんによく見られますが、ワンちゃんにも時々見られます。耳ダニは他の動物に感染するため、多頭飼いをされている所に集団感染する事もあります。

 

 

 

 

 

耳ダニ2.jpg

 

 皮膚に付ける、スポットタイプの薬があり、これで駆除と予防が出来ます。

【ペットの病気】2012.12.28

 膀胱内に尿結石が出来る事を、「膀胱結石」と言います。

 ワンちゃん・ネコちゃん共に、結石が出来る事はよくありますが、特に大きな結石はワンちゃんでよく見られます。また結石が腎臓内に出来れば「腎結石」、尿道に出来れば「尿道結石」と呼びます。

 

ストラバイト.JPG

 

 ワンちゃん・ネコちゃんで一番よくみられる尿結石は「ストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)」で、顕微鏡で見ると左の写真の様な、「棺桶状」の結晶をしています。

 

 

 

 

 

シュウ酸カルシウム結晶.JPG

 

 ストラバイト結石の次によく見られるのが、左の写真の「シュウ酸カルシウム」で、これは顕微鏡で見ると様々な形で見られますが、写真の様に正方形状で見られる事もあります。

 

 ストラバイト、シュウ酸カルシウム以外の尿結石もありますが、犬・ネコの場合多くはこの2種類がほとんどです。

 

 

 これらの結晶は普段の食餌の影響が強く、また結晶の出来やすい犬種もいます。

 そして尿結石が出来ると、尿道や膀胱の粘膜が傷付けられ血尿が出たり、最近の感染により膀胱炎になったりします。また結石が尿道に詰まり尿閉(尿が出なくなる)を起こす事もあります。

 

膀胱結石 X線.jpg 左の写真はM・ダックスフントの膀胱結石のレントゲン写真です。下腹部に大きな結石が白く写っています。

 小さな膀胱結石の場合、症状が出ない事もあり、レントゲン撮影やエコー検査で偶然発見される事もあります。

 尿結石がストラバイトですと療法食で溶ける可能性もありますが、シュウ酸カルシウムであったり、左のレントゲン写真の様にあまりに大きな結石であった場合は、手術によって物理的に取り除かなくてはなりません。

 

 

 

 

 

 

ストラバイト結石.jpg 上のレントゲン写真のM・ダックスフントを手術し、摘出した膀胱結石です。

 これはストラバイトの結石でした。ストラバイトの場合、左の写真の様に表面が滑らかな結石が出来る場合が多いです。

 これほど大きな結石だと腹部の触診でも分かります。

 

 

 

 

 

 

 

 

シュウ酸カルシウム結石.jpg こちらはシュウ酸カルシウムの結石です。表面がギザギザな形状をする事が多いです。またこのような形のため、粘膜を傷付けやすく血尿や、膀胱炎を起こしやすい傾向にあります。

 

 また膀胱結石は、複数の種類の結晶が入り混じって出来る場合もあります。

 

 

 

 

 尿結石は、普段の食餌管理によって発生を抑える事が出来ます。また結石が出来たとしても、結石の種類によっては療法食によって溶かす事も出来ます。

 例え結石が出来ていなかったとしても、尿検査で結晶が出ていたり、血尿が出やすいワンちゃん・ネコちゃんは結石の出来にくい療法食に切り替えた方が良いかも知れません。

 一度動物病院にご相談ください。

【ペットの病気】2012.12.27

 子宮蓄膿症は子宮内に膿汁が溜まる病気で、ブドウ球菌や大腸菌などの雑菌が膣から侵入する事で、発症します。特に中・高齢の避妊手術を受けていない女の子のワンちゃんに多く見られますが、ネコちゃんでも時々見られます。

 

 症状は、

・元気、食欲の低下    ・発熱

・嘔吐、下痢       ・外陰部からの膿汁や血液の排出

・多飲多尿

 などが見られます。

 

 外陰部からの排膿を発見して来院される飼い主様も多いですが(下痢と思われる方もいます)、排膿が見られない事もよくあります。どちらかと言うと、外陰部からの排膿がない方が重篤になりやすいですが。

 

 根本的な治療方法は、手術によって卵巣・子宮を摘出する事です。

 

子宮蓄膿症.jpg

 

 左の写真は犬の摘出した子宮です。通常の犬の子宮は小指くらいの太さですが、蓄膿により特に右側の子宮が拡大しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

子宮蓄膿症 腹膜炎.jpg

 

 子宮破裂し、膿汁が腹腔内に漏れ出して、重度の腹膜炎を起こした症例です。

 手で保持している所が裂けた子宮部分です。子宮間膜の脂肪や子宮が黄味がかった色になっていて、重度の腹膜炎である事が分かります。

 

 

 

 

 

 

 

猫 子宮蓄膿症.jpg

 

 猫でも犬ほどではありませんが、子宮蓄膿症が見られます。左の写真は、重度の蓄膿で子宮が拡大し、腹部の膨満が見られた症例です。

 

 

 

 

 子宮蓄膿症などの子宮疾患では、若いころの避妊手術が何よりの予防となります。

 特に子宮蓄膿症は高齢のワンちゃんでよく見られる病気です。

 避妊手術をきちんと行い、子宮疾患を予防しましょう。

【ペットの病気】2012.12.26

 精巣炎は高齢で未去勢のワンちゃんに時々見られる病気です。睾丸・陰嚢が腫れたり、痛みを伴ったりする事で、飼い主様が発見し退院される事が多いと思います。

 

 

精巣炎1.jpg

 

 左の写真も高齢犬で、右側の睾丸が野球ボール大に肥大し、痛みを伴っていました。

 

 抗生剤の投与により腫れと痛みは収まりましたが、指でつまんでいる部分の精巣上体に、腫脹と硬結感が残っています。

 

 再発の可能性もあるため、去勢手術にて睾丸摘出を行いました。

 

 

 

 

 

精巣炎2.jpg

 

 手術により両側の睾丸を摘出しました。左側が正常な睾丸で、右側が疾患部の睾丸です。

 

 精巣上体の腫脹と充血、精巣動静脈も腫脹している事が分かります。

 

 

 

 

 

 

 

精巣炎3.jpg

 

 患部の右側睾丸は陰嚢皮下織との癒着が激しく、皮下識に炎症・化膿も見られたため、同時に陰嚢皮膚も切除しました。

 

 この症例は特に問題なく手術も終わりましたが、高齢すぎて手術が出来ない場合もあるため、若い内の去勢手術が何よりの予防となります。

【ペットの病気】2012.12.25

臍ヘルニア1.jpg 「ヘルニア」とは中の物質が外に飛び出す事を言います。臍(ヘソ)周辺の腹筋が薄くなっていたり、穴が開いていたりする事によって、腹腔内の脂肪や臓器が飛び出す事を「臍ヘルニア」と呼びます。またこれが、鼠径部(太ももの付け根)で起これば、「鼠径ヘルニア」と呼びます。

 

 犬でよく見られ、大部分が幼犬のころからヘソ周辺の皮膚がプクッと出ていて、健康診断やワクチン接種の時に指摘されます。

 多くは無症状で経過して行きますが、時々ヘルニア輪(ヘルニアの穴)が狭窄を起こし、ヘルニア嚢内の脂肪組織などが壊死してしまう事があります。

 

 

 そのため、臍ヘルニアや鼠径ヘルニアがあるワンちゃんは、避妊・去勢手術の際に一緒に手術してしまう事が一般的です。

 

臍ヘルニア2.jpg  ヘルニア周辺の皮膚を切開し、ヘルニア嚢内の組織を取り除くか腹腔内に戻し、腹筋を縫合して皮膚を縫合します。

 

 また、ヘルニア嚢内はほとんどが脂肪組織なのですが、ヘルニア輪が大きい場合は腸などの臓器がヘルニア嚢に入り込み、ここで狭窄が起きると腸閉塞や臓器が壊死し、死亡する事もあります。

 

 

 無症状な内に手術する事をお勧めします。

 

臍ヘルニア3.jpg

 

 また、犬で一般的と言いましたが、猫でも時々見られます。

 ネコちゃんでも同様に悪化する事がありますので、避妊・去勢手術と同時に手術しておきましょう。

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